示説 4

高齢がん患者の希望に沿った療養場所の調整

荒川 浩 (桐生厚生総合病院)


【目的】外来通院中の高齢がん患者に早期から緩和ケアチームの看護師が介入し,患者,家族が希望する療養場所の調整ができた事例を紹介する.
【研究方法】事例検討.所属施設の倫理審査委員会から承認を得た.
【事例紹介】A氏は80歳代女性で独居であった.胸腺がん,がん性腹膜炎,心膜炎と診断され,B大学病院から自宅近くのC病院へ紹介となり外来通院をしていた.A氏の夫は数年前に肺の病気を患ったが,積極的な治療をせずに亡くなる直前まで穏やかに過ごしていた.A氏はその様子を見て「自分も最期は夫のように亡くなりたい」と積極的な治療を望んでいなかった.看護師は外来診察に同席し,患者,家族と面談を繰り返した.
【結果】A氏は徐々に胸部痛や呼吸困難,浮腫が強くなり,一人で立ち上がるのが困難になったため,次女が泊まり込んで介護をするようになった.看護師はA氏の症状緩和を行うとともにA氏の症状緩和ができたタイミングで療養の場の話し合いをし,緩和ケア病棟へいつでも入院できる体制を整えた.十分な情報提供と患者,家族,医療者間で話し合いを重ねたことで患者の価値観を尊重した療養場所の調整ができた.
【考察・結論】早期から患者,家族,医療者間で話し合いを重ね,適切なタイミングで患者の思いや価値観を尊重した支援ができたと考える.高齢がん患者の療養場所の調整は,一度にすべてを行うのではなく,状態の変化に合わせて行っていく必要がある.


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