示説 2

緩和ケア病棟で過ごす患者の苦しみとその援助 −A氏の自宅外出を支援した関わり−

本多 昌子,安生 未央,松井 彩,山口 美友記,八塩 知美 (渋川医療センター)


【目的】がん患者のもつ苦しみを明らかにし,緩和ケア病棟で過ごす患者に求められている看護支援を検討する.
【研究方法】事例研究.所属施設の倫理審査委員会の承認を得た.
【事例紹介】A氏は70歳代男性で,左尿管がん,肺・肝転移があった.看取りケア目的で転入となったが,「退院したい」希望を強く訴えていた.家族は,A氏の妻の介護もあるためA氏の自宅退院は困難と話し,外出にも難色を示した.
【結果】A氏の「退院したい」訴えの背景にどのような想いがあるのか,コミュニケーションを図る中で探索を続けた.結果,「妻に逢いたい」という希望が聴かれ,更には「自分が入院した事で妻に施設入所をさせてしまったことを謝りたい」との苦しみがある事が分かった.A氏は入院前まで妻の介護を担っており,そこに自分の存在意義を見出していた事,それが入院によって中断され自己肯定感の低下や妻への負い目といった苦しみに繋がっていたと捉えた.家族に対し,A氏の苦しみや残された時間が短い事,外出の阻害要因についてともに検討する事を伝え,外出を実現することができた.帰院後,A氏より「やっと楽になれた」との言葉が聴かれた.
【考察】訴えの背景からA氏の隠れた想いを抽出することにより,家族へ予後も含めた情報提供ができ,外出の希望を叶えることができた.外出の実現は,A氏の苦しみを軽くする機会ともなり,双方にとって有効な看護支援になった事が示唆された.


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