特別講演T

がん医療に携わる看護師の倫理的感性を高め、話し合える現場を創る

濱口 恵子
(がん研究会有明病院 副看護部長/緩和ケアセンターGM がん看護専門看護師)

 がん治療は治癒・生存期間の延長・QOLの維持向上をめざす治療とはいえ、失声や末梢神経障害などの様々な機能障害、ボディイメージやセルフイメージの変容、妊孕性の問題など、患者の生活に変化を伴うことが多い。しかもエビデンスは確率論であるため、治療効果がその患者にあらわれるとは限らない(医療の不確実性)。
 そこで患者の価値観が多様化する中で、「患者が納得できる最善とは何か」を患者と多職種チームが対話しながら考え、倫理的配慮がなされることが求められる。
倫理原則は、与益(善行)、無危害、自律尊重、正義の4つがあるが、臨床現場ではこれらの原則同士が葛藤しているため、どのようにバランスをとるのかという倫理的ジレンマに遭遇する。そのため、患者−家族−医療者間で十分に話し合い、個別的に包括的に判断すること、つまり、倫理的配慮をするためには話し合える現場を創ることが不可欠である。
 がん医療は外来に移行しているため、いかに外来−病棟−多部門が連携し、初診時から患者の個別性を大切にして倫理的配慮に基づいた医療・ケアを行うかが課題である。がん研究会有明病院での取り組みを紹介し、看護師が多職種チームの中で役割と責任を果たすこと、細やかな生活援助に加えてがん治療看護や緩和ケアを駆使していくこと、これらそのものが倫理的配慮につながることを改めて考えたい。


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