口頭1-3

病状を受け入れられない患者と家族への看護介入〜一事例の振り返りを通し看護倫理を考える〜
〇高山 仁美、神宮 彩子
群馬県済生会前橋病院



【目的】化学療法の効果のない患者の看護を通して遭遇した倫理的看護問題について振り返り、検討する。
【研究方法】生命倫理の6つの原則を用いて事例検討を行う。
【倫理的配慮】院内の倫理委員会にて承認を得た。さらに個人が特定できないよう配慮した。
【事例紹介】A氏は30歳代の女性で専業主婦であり、家族構成は、夫と2人の子どもの4人家族であった。腹痛を主訴に当院に紹介され、胃がん(StageW、リンパ節転移、腹膜播種)を診断されたが手術適応なく化学療法が導入された。導入前に医師から夫へ予後は厳しいこと、本人に対してはまずは化学療法を行うことの説明があった。その後サードラインまで施行するが、治療の効果はなく、本人は良くなることを信じたまま永眠された。
【結果】夫の悲観を思い、予後不良という辛い病状を伏せた選択は≪無危害の原則≫に該当するが、一方でA氏の意向を確認し尊重できないという≪自立の尊重≫が守られていなかった。A氏を守ろうとする夫の思いと、A氏の本当の意向を確認できないという看護師の思いが対立し生じた倫理的問題であった。
【考察・結論】看護師は、倫理的問題にまず気づくことが重要であり、患者の価値観やニーズを把握し、患者・家族の権利を擁護する役割があると考えられる。倫理的問題を検討する際、多職種チームで話し合い、常に≪患者にとっての最善≫を考えることが重要であることが示唆された。


プログラムへ戻る