一般演題 8
父親の死を体験した息子のスピリチュアルペインヘの支援

○岸奈美子、高橋美香、成清一郎
医療法人社団日高会日高病院


【はじめに】
 A氏の息子は、A氏が化学療法を行おうとしていた矢先、心の準備などができていないなか喪失経験をし、複雑化した悲嘆過程を呈しやすいと考えた。A. Deeken によれば、予期悲嘆が十分に行えないと、「精神的打撃と麻蝉状態」「パニック」などの初期の段階に影響を及ぼすと言われている。A氏の息子は、どうしようもない感情をゆっくり行動に移し、その行動に看護師が寄り添うことの意味を振り返った。
【倫理的配慮】
 個人が特定できないよう配慮した。
【事例】
I.事例紹介:
 A氏60歳代男性。左肺がん。配偶者、長女、長男、次女であり家族関係は良好。
II. 看護の実際:
 A氏は化学療法予定であったが、息子と腕相撲を行い上腕骨骨折し手術となった。再び化学療法予定となった当日に心肺停止、救急搬送され永眠された。息子は、父親の死を前に呆然と立ち尽くした。父親に近づけず歯を食いしばり右往左往していた。その後、ゆっくりと父親に近づき座り、そっと父親の頭を撫でて見つめ、歯を食いしばり泣き崩れた。看護師が、エンゼルケアを始めると、息子は無言で処置を手伝い、看護師はそのペースに合わせてケアを行った。
【考察】
 大切な家族を亡くした直後に強い悲嘆感情を示すことは当然のことであり、息子の行動はそれに相当する行動であった。その行動を当然の事と判断し、息子にペースを合わせたケアは、息子の喪失の作業過程へのサポートと考える。感じている感情をそのまま受け止めるケアが寄り添いになると考える。
【おわりに】
 大切な人を亡くした家族員それぞれの示す反応を受け止め、それぞれに見合った寄り添い方をさらに深めていきたいと考える。


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