消滅からくる苦痛を抱えた患者
〜苦手意識を克服し関係性を築いた過程を振り返る〜

○コ永 真美 佐竹 明美
日高病院

 60代で肺がんにより終末期を迎えた男性であるA氏のプライマリーとなった。入院当初のA氏は無口で表情が硬くコミュニケーションに困難感を抱いた。そのためA氏の妻よりA氏がどんな思いでいるのかを聴いた。そのことより、A氏は「寝てしまったら目が覚めないのでは」という苦痛があるということを知った。A氏が安心して眠れる環境を確保することが必要であると考え、カンファレンスによりA氏の気持ちについて情報提供し、チームで情報を共有するとともに環境調整を行った。その後A氏は安心して睡眠がとれるようになり、それを機にA氏との関係性は変化しA氏よりのニーズも表出されるようになった。亡くなる前日に「ありがとう」という言葉が聞かれた。A氏の苦痛を理解しようと努めチームで関わり、A氏が自分の苦痛を理解してもらえたと実感できたこと、それらによりA氏の苦痛は緩和され亡くなる直前に感謝の言葉として現れたと考える。そして、A氏との関係性のなかで相互作用を及ぼしながらケアを提供すると同時にA氏からケアを与えられている存在となっていることに気付いた。A氏の亡くなる直前の笑顔は患者をひとりの人間として看ていく大切さを教えてくれた。

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