最期を住み慣れた場所で過ごすためのチームの関わり

○京田亜由美 福田元子 小笠原一夫
医療法人一歩会 緩和ケア診療所・いっぽ

【はじめに】
最期を自宅で過ごしたいと望んでいるが、家族の負担を心配し、退院に踏み切れない患者や家族が多いのが現状である。当診療所は、がん患者の在宅緩和ケアを行っており、今回、チームでどのように患者や家族を支えているかを事例報告する。
【方法】
診療録を基に情報を収集し、分析した。遺族に発表についての同意を得た。
【結果】
Aさんは、前立腺がんの70歳の男性で、妻と2人暮らしをしていた。腰椎転移による下肢麻痺、妻の持病から、退院後の生活への不安が大きかった。退院前カンファレンスを行い、妻は退院を決心した。ヘルパーが2〜3回/日、看護師も毎日訪問することで妻の介護負担を軽減しながら精神的ケアを行った。訪問入浴は夫婦ともに大変よろこんだ。徐々に傾眠となり、認知障害が見られてきた時、妻から「急に殺してくれ、死にたいと訴えている」と連絡があった。妻にしか弱音を吐けない性格のため、看護師、ヘルパーは妻を支えることで、Aさんのスピリチュアルペインが少しでも緩和されるよう介入した。その後、意識の波がありながらもつらさの訴えはなくなり、子供や孫たちが来たときには楽しそうに話していた。退院から1ヶ月半後、家族に見守られながら永眠された。妻は「自分で建てたこの家で最期までいられてよかった」と話した。
【まとめ】
施設を含めた在宅でのがん患者の介護、看取りを支えるためには、医療、介護の垣根を越えた地域でのチームケアが重要である。心の奥底のつらさ、叫びであるスピリチュアルペインへのケアも医療者だけが担うものではなく、関わっているチーム員それぞれが自分たちなりのケアを行うことが求められている。

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