優秀賞講演


『終末期在宅療養における症状マネジメントと家族の予期悲嘆への看護』


一場 慶
群馬大学医学部附属病院

 終末期がん患者の希望する療養場所として自宅が挙げられているが、様々な問題があり、自宅での最期を迎えられる患者は少ない現状がある。そんな中でも家族は患者の思いを知り、葛藤や不安、予期悲嘆を抱えながらも在宅療養を決意する状況にあるため、患者と同様に家族ケアにも重点を置き、介入していくことが重要である。
 今回私は、進行胃癌・多発肝転移のため治療を行ったが、効果が得られず、本人の強い希望で在宅緩和ケアが開始となったA氏を担当した。診断からの経過も短く、家族は、日々涙する状況にあり、A氏の症状緩和への介入と家族への介入に重点を置いて関わりを持つこととした。しかし、急激な状態変化から在宅療養も短期間となった状況があった。初回訪問からグリーフケアを振り返り、症状マネジメントを行うことがA氏にとっての役割の維持であり、家族への配慮でもあった。そして、それに対する介入こそがその人らしさを支えるケアであることを学んだ。また、終末期における予期悲嘆への介入が悲嘆回復へのプロセスの一助になることを実感することができた。患者・家族ケアでは、その時の自分の感情や思い、行動を振り返ることで分かる自分の看護観を大切にしていきたい。

この講演の後、理事長より優秀賞を授与されました。

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