がん看護高度実践看護学(38単位) ケアとキュアの融合実習での学び
−乳がん患者の診断と看護支援の判断−


今井洋子1) 2) 神田清子3) 二渡玉江3) 堀口 淳4)
1) 前橋赤十字病院
2) 元群馬大学大学院保健学研究科博士前期課程
3) 群馬大学大学院保健学研究科
4) 群馬大学医学部附属病院乳腺外科


【はじめに】
乳がんは日本人女性の中で最も罹患率が高く、年々増加傾向にある。現在の乳がん治療は、従来の手術療法、放射線療法、薬物療法に加え、がん細胞遺伝子を分析する技術の進歩により、患者個々のがんの性格に応じて治療を選択する個別化治療が進んできている。 このような複雑化してきている医療の中で、看護師が臨床判断能力を持ち、ケアとキュアの融合による高度な知識・技術を駆使して、対象の治療・療養過程の全般を管理、実践していく必要性があり、その実習体験をしたのでここに報告する。
【目的】
専門看護師としてケアとキュアを融合したがん看護高度実践看護学実習における乳がん患者の診断と看護支援に関する判断を高めた実習体験の報告を行い、今後の活動に生かす。
【倫理的配慮】
患者本人から実習時に学会発表の同意を得た。また個人が特定できないよう配慮した。
【実践内容と判断】
事例紹介:40歳代 乳腺外来初診。首都圏で銀行員として勤務。自己検診にて右乳房にしこりを見つけ、近医受診。乳がんの疑いにて地元であるB大学病院を紹介された。
視診:右乳房非対称、右乳房腫脹著明。みかんの皮様の皮膚の変化及び発赤あり。
触診:右乳房C領域に5〜6cmの円形の腫瘤あり。可動性はなし。圧痛なし。
乳腺エコーを実施。所見:右乳房C領域に浸潤性腫瘍径6cm、乳管への広がりあり、腋窩リンパ節に4個、鎖骨上に1個腫瘤あり。腋窩リンパ節及び鎖骨上腫瘤径は1cm光を通さないため悪性腫瘍の可能性が高いと判断した。
組織診、FDG-PETの結果から、臨床判断は、StageVbであり、ルミナールBに分類される。術前薬物療法で主要縮小後、手術、その後ホルモン療法(TAM+LH-RHアゴニスト)を行うと判断した。対象者は今後の治療と仕事との両立に悩んでおり不安を抱えていた。そこで先の見通しを与え、自己判断できるようなキュアを踏まえた情報提供が必要であると判断した。ケアとキュアを融合した実習体験は、専門看護師に臨床判断と介入技術を持ち、医師と協働しながら水準の高い看護を実践していく役割の拡大をもたらしたと考える。

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