特別講演T


『高齢がんサバイバーへの在宅療養支援
〜住み慣れた地域で安心して過ごせるために〜』


宇野 さつき
医療法人社団 新国内科医院 看護師長 がん看護専門看護師

 日本のみならず、海外においても高齢化問題がますます進む中で、がんという遺伝子変異をベースにした疾患へのリスクとその支援のあり方は、これからの地域社会における重要な課題だと考える。がん医療の発展は、以前は難しかった高齢者に対する手術や抗がん剤治療、放射線治療を可能にし、がんサバイバーとして過ごす人も増えてきた。また寿命が長くなることでがん罹患のリスクも高まり、あるがんのサバイバーが、また別のがんに罹患したり、他の慢性疾患との対応が必要になるケースも少なくない。2人に1人ががんに罹患し、3人に1人ががんで亡くなる時代となり、がんという病気が、心不全などと同じように、高齢者の慢性疾患の一つとして捉えていかなければならなくなった。
 高齢になると、自然な経過としても身体機能・認知機能の低下がおこり、対処能力も低下するため、それに伴う生活支援の必要性も高まってくる。しかし介護体制においては、今の日本の家族のあり方の変化からも、いわゆる子供たちの世代がサポートしていくという構造も不安定になってきている。ではどうすれば、高齢になっても、がんになっても、安心して住み慣れた地域で、自分らしく最期まで生活していくことができるのだろうか?  私が今、神戸で取り組んでいるのは、高齢がん患者のトータル・マネジメントと、それを支える地域の体制づくりである。高齢者の在宅療養支援において、医療や介護だけでは支援しきれない、いわゆる「地域連携」だけでは十分に支えきれない様々なニーズを踏まえ、しかし一人一人が機嫌よく安心して過ごせるように、よりきめ細かなサポートとそれを支えられるスタッフや地域づくりに取り組んでいる。活動エリア内では、本人の希望があれば、がんで認知症があり、なおかつ独居であっても、在宅での看取りが可能となっている。
 今回の講演では、これまでの取り組みや事例などもご紹介しながら、皆さまと共に高齢がん患者をどのように地域で支えていけるかを一緒に考えていきたいと思う。




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